【植物本じまん】木々は歌う

木々は歌う」 D.Gハスケル著 星代通子訳 築地書館

生きとし生きているものは、みえない音を奏でている。

そして、それぞれの音が重なり合うとき、
共鳴が起こるのだろう。

そんなふうに感じる瞬間が、
これまで何度もありました。

根拠はなかったけれど、
ずっとそう信じていた私のもとに、
ある時、この本がやってきました。

夫が教えてくれ、
さらにお客様からいただいた一冊。
少しずつ読みすすめた本です。

生物学博士である著者が、
世界中の12本の樹木に会いに行き、
科学的知見から文化的背景、
そして現代社会における問題点まで、
樹木を取り巻くさまざまな「音」を拾い集めていくエッセイ、
といえるでしょうか。

広い視点と丁寧な描写は、
ときに情報がどこまでも広がっていき、
自分の感覚が追いつかなくなるような瞬間もありました。

ですが、
樹木の樹皮下にセンサーを取り付けると、
外界の音を振動として受け取っていることがわかっているそうです。

樹木は、さまざまな音を受け取りながら生きている。

そう思うと、
樹木を単なる「植物の生態」だけで語ることは
できないのだと感じました。

アマゾンのセイボにはじまり、
街路樹として生きるマメナシ、
果樹園で管理されるオリーブ、
盆栽として生きる樹齢400年のゴヨウマツ。

登場する樹木たちは実に多種多様です。

けれど、共通しているのは、
どの木も「生きものとしての生涯」を生きているということ。

形は違っても、
樹木もまたコミュニティの一部なのだということが、
この本からよく伝わってきました。

「木はみんな生きている人間で、言葉をもっているのよ。
セイボはあらゆる植物の命を代表している。
この木だけを聞くことはできないわ。
どの木もたったひとりで生きているのではないから。」

アマゾンで保全活動を行う
テレサ・シキのこの言葉は、
まさしく本全体を象徴しているように感じます。

目の前の木が何を語っているのか。

人と同じように耳を傾けることができたなら、
「地球家族」としての社会を、
少しずつ築いていけるのかもしれません。

ものとしてではなく、
生きものとして互いを尊重する社会。

そんな理想の風景を、
この本は静かに見せてくれるのでした。


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